※自転車研究家の鈴木邦友評議員からの報告です。(2012年4月16日)
「ハブシャフトの折れⅡ」
・・・アドベンチャーのためのハブのチューンナップ・・・
ハードな走行や飛行機輪行等でフレームの精度が落ちてくると走行安定性が低下するのと同時にハブシャフトも折れやすくなる。しかし旅行中ではフレームの修正等はなかなかできるものではない。ハブシャフトの折れ等心配しながら走ることになる。そんなときのためにアドベンチャー仕様のハブのチューンナップを紹介させていただこう。
アドベンチャーサイクリングには少々不安を感じてしまうクイックレリーズ式ハブシャフト
現在高級なハブというとクイックレリーズ式のものしかない。その昔はマキシカー社のナット式ツーリング用ハブも存在したが、今ではほとんど手に入らない。今日では市販のクイックレリーズ式のハブでもほとんどハブシャフトは折れることはないが、世界一周や大陸横断等のハードな走行ともなると少々物足りなさを感じてしまう。
ではこれら市販のハブをどのようにしてアドベンチャー仕様のヘビーデューティなものにするかというと・・・・・。ハブシャフト自体を最も丈夫なソリッド(無垢)タイプのトラックレーサー用ハブシャフトやMTB用ハブシャフトに換装してしまうということになる。
まず前知識として、通常国産のハブシャフトの規格は、一般用のソリッドタイプで前が5/16×26TPI、後が3/8×26TPI、これがクイックレリーズ式ハブシャフトだと、前が9×1.0mm、後が10×1.0mmとなる。
※ 参考 伊国規格 一般ソリッド 前
8×26TPI 後 9.5×26TPI
クイック中空 前 9×26TPI 後 9.5×26TPI
カンパ クイック中空 前 9×26TPI 後 10×26TPI
仏国規格 一般ソリッド 前
8×1.0mm(or 26TPI) 後 9.5×1.0mm(or 26TPI)
クイック中空 前 9×1.0mm(or 26TPI) 後 9.5×1.0mm(or 26TPI)
上がトラックレーサー用ハブシャフト 下がMTB用ハブシャフト
ロックナット巾が120mm以下であれば前者、それ以上であれば後者を使う
後者にはいくつか長さの異なるものがあるので、愛車に合わせて選択する
では、トラックレーサー用ハブシャフトやMTB用ハブシャフトはというと前が9×1.0mm、後が10×1.0mmでなんとクイックレリーズ式ハブシャフトと同じということになる。つまり一般ハブはこれらの丈夫なシャフトに換装することはできないが、クイックレリーズ式ハブであれば可能ということになる。要するにハブシャフトだけを交換すればよいということになる。
ただしここで一つ注意をしなければならないことがある。それはシャフトの全長。通常トラックレーサーのリヤハブロックナット寸法は丸断面のシャフトで120mm。要するにトラックレーサー用ハブシャフトを使う場合エンド巾が120mmまでの自転車にしか対応できないということになる。ところが現在の自転車のエンド巾は126mm以上があたりまえで、そうなるとトラックレーサー用ハブシャフトでは対応できないということになる。
そこで必要となるのがソリッドタイプのMTB用ハブシャフト。かなり長いものまで様々なサイズが準備され、中にはクロモリ素材のトラックレーサーのハブシャフト並みの強度を持つものもある。トラックレーサー用ハブシャフトを使うか、MTB用ハブシャフトを使うかは、愛車に合わせて選択すればよいことになる。
トラックレーサー用ハブシャフトに換装され、アドベンチャー仕様に生まれ変わったハブ
実際世界一周に使ってみたが、その間ハブシャフトの折れどころか曲がることもなかった
目安となるハブシャフトの全長は、愛車のロックナット巾より40mm程長いものがベスト(ハブナットとシャフトエンドがツライチになって美しい)で、それ以上のものであっても問題はない。
これで旅行中のハブシャフト折れの心配はかなり軽減されるはず。さらに工具無しでは外せないので、いたずらや盗難の心配もなくなる。
ちなみに筆者の場合小旅行の時は、ハブナットではなくネジを切りなおしたウイングナットに換装し、工具無しで車輪の着脱がおこなえるようにしている。
鈴木邦友
MTB用ハブシャフトに換装され、ウイングナットが組み込まれたジュラエース
小旅行の時には車輪の着脱が工具無しでおこなえるのでとても便利(※ウイングナットにはネジの切り直し加工が必要)
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