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※自転車研究家の鈴木邦友評議員からの報告です。(2013年2月12日)

  

サビに注意Ⅰ

 
水が溜まって大きな穴の開いた自動車の床ちなみにフロアフレームまでサビて折れていた。これが自転車のフレームだったら致命的だ

 金属から作られている自転車にとって、サビは大敵。フレームチューブの肉厚はほんの1mmほど、一度サビの餌食になると、その環境によっては数年程で穴が空く。たとえ穴が空かなくとも、強度の低下は歪めない。特に強度の限界でさまざまな環境を走るアドベンチャーサイクリングではサビはとても大きな問題となる。

 サビというとそこに発生する茶色の腐食生成物を思い浮かべる。しかしサビの最大の問題はその腐食生成物ではない。サビるということは、簡単に言うと金属が溶けること。そして金属が目減りすること。茶色い腐食生成物は溶けた金属が酸素と水と一緒になりできただけのもので、それ自体は特に大きな影響はない。

サビの発生にはいくつかの条件が必要になる。自然界においてサビの原因となるものは主に環境中に存在する酸素と液体の水ということになる。液体の水の存在がなければサビは発生しないし、水の中に浸けておいてもそこに酸素の存在がなければやはりサビは発生しない。ところがこの酸素も水も自然界には大量に存在するため、金属はいつでもこれらサビの原因に侵されているということになる。

基本的にサビは、そのような環境の中で金属表面に電池が形成されることによって起こる電気的作用のこと。金属元素が電子を授受してイオン化することを言う。そのため電気が流れつづける限りサビはすすんでゆく。一つの金属でも部分的に電位の大きいところと小さいところが存在したり、電位の異なる金属同士を接触させたりするとそこに電池が形成され起こる。ちなみに部分的に熱を加えたり外圧を与えたり環境を変えたりすると、そこには電位差が生まれやすくなる。

以上がサビ発生のメカニズムだ。

では長い旅の期間、大切な自転車をどのようにしてこのサビから守ってゆけばよいかというと・・・・・。これらの原因から金属を遮断してしまえばよいということになる。

 
ボトム下に設けた水抜き用ドレン。ベアリングに近い部分なので普段は塞いでおいた方がよいグリスアップ用のサービスホールとしても使える

自転車を構成する金属の表面は塗装やメッキ、表面処理等で保護されている。まず見えるとことからサビに侵されることはない。しかし内面や裏面、摺動部、接続部等見えないところは金属がむき出しの場合が多いく、サビの餌食になりやすい。特にフレームパイプの内側は危険だ。一度水が侵入してしまうと排水が困難で、いつまでもた溜まった状態がつづく部分もある。「自転車を逆さにしたらシートチューブから茶色い水が大量に流れ出てきた。」なんて光景を目の当たりにした方は結構多いのではないかと思う。まさに液体の水が存在していたという証で、茶色の水は金属表面が溶けてしまったということを意味している。

水はどんな狭い隙間からも侵入する。浸水を完全に防ぐことは無理に等しい。それよりも入ってしまった水をいかに早く排水させるかということを考えた方がよい。長距離旅行用の自転車は設計段階で排水に注意を払うべき。浸水が考えられるところには必ず排水口を設けておくこと。また水の逃げ道をいつもきれいに保ち、水がスムーズに流れ出るようにしておくことが重要となる。

さらに内部には防錆処理を施しておく。最近の自動車は、ボディの内側からサビが発生しないようにグリス状の防錆剤が塗布してある。ようするに金属の表面エネルギーを小さくし水分をはじいてしまおうというものだ。これはカーショップでも簡単に手に入れられるので、一通り見えないところに塗布しておくことを勧める。スプレー式で細く長いノズルがついているのでどんなに狭いところにでも塗布できる。

 

部品と部品、特に種類の異なる金属が接するところには、組付け時に防錆剤やグリスを塗布しておくべき。水は前述のとおりどんなに狭い隙間にも侵入する。異種金属間に水が侵入するとそこで腐食電池が形成され、電位の小さい金属が溶けることになる。鉄のフレームに差し込まれたアルミのハンドルステムやシートポストがサビて抜けなくなるのはまさにこのため。この隙間に疎水性の油脂を塗りつけておくことで、絶縁効果が上がり、さらには水自体の侵入を抑えることにもなる。

ネジも同様、ボルトやナットのネジ部に油脂を塗布して組み付けることで、サビによるネジの固着も防げる。ちなみにネジに油脂を塗布すると緩みやすくなるのではないかと思われる方もいらっしゃるだろうが心配はいらない。逆に小さなトルクで大きな締付け力を発生させることができるため、内部応力や残留応力の軽減になるばかりか、応力腐食破壊の抑制にもなる。(油脂を塗布して締付けが悪くなったとしたら、サイズや規格の相違あるいは工作精度を先に疑うべき。これらはサビ以前に大きなトラブルの原因となる。)

 

 さらにネジや小物等は材質にも留意すべき。異なる種類の金属を液体の水が存在する環境で接触させると電位の小さい金属が溶ける。鉄のフレームにステンレスの部品を組み付けるとフレームがサビる。アルミのドロヨケをステンレスのネジで留めるとドロヨケが落ちる。異なる金属を組み合わせる場合はどちらが大切かということを考えて材質を選ぶべき。できれば同じ材質のものを選んだ方がよい。

 

 サビは意外にも大きな故障や事故の原因となる。

 せっかくの自転車旅行をサビごときで台無しにしてしまわぬよう、防錆対策はしっかりおこなっておきたいものだ。

    
見えないところをサビから守るスプレー式防錆剤塗布後もグリス状で除去も可能長細いチューブ付なのでどんなところでも塗布可能カーショップで手に入る

           
旧車レストアラー御用達のボディ内部用強力防錆ペイント。サビの上からも塗れる黒、シルバー、クリアーの3色がある。

             
 サビを化学変化させ防錆被膜に変える防錆剤。 説明書には赤サビを黒サビに変えるとある

            
亜鉛塗料サビの電気的メカニズムを利用し電位の小さい亜鉛を金属に密着させることで金属を防錆する塗料

                                         鈴木邦友


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