古薗 祐介 「南米4ヵ国自転車走破」
2012年3月11日
※鹿児島県薩摩川内市に住む古薗祐介会員は23歳の時、10万人に一人といわれる1型糖尿病を発症。当初は病名も分からず命の危険もあったという。その後、適度な運動のために始めた自転車との出会いが転機に、やりがいを見つけたことで病気も回復に向かい、何事にも積極的になった。オーストラリア一周、東南アジア一周4ヵ国やインド・ネパール横断なども達成している。今回も積み込んでいったインスリン注射を一日4回打ちながら走行。南米4カ国サイクリングからの帰国報告です。(2012年3月11日)
期間:2011年10月11日~2012年1月30日(南米滞在期間108日)
行き先:南米4カ国(ペルー・ボリビア・チリ・アルゼンチン)
走行距離:5740km
一型糖尿病というのは一般に言われる糖尿病(2型糖尿病)とは違い、発症すれば必ずインスリンを打たなければいけません。膵臓からのインスリン分泌が限りなくゼロになるので、インスリンを打たずに食事(糖質)を摂ると血糖値を下げるホルモン(インスリン)が出ないので、限りなく血糖値が上昇していきます。
私の使っているインスリンは超速効型インスリンと持続型インスリンの2種類を使っています。超速効型は糖質摂取後30分~2時間程の間、腸から吸収された糖質で血糖値が上がるのを抑えるインスリンです。(インスリンの作用時間は2~3時間程で毎食事前に注射)持続型は作用時間が24時間近くあり、生命活動を維持していくために必要なインスリン(基礎インスリン)として使用します。(1日一回注射)
血糖値が200を超えてくると(正常は80~110位)、喉の渇きや、運動時は筋肉の痛み等出てきます。摂取した糖質に対してインスリンを打つ量が多かったり、運動の量が多かったりすると低血糖になり、意識朦朧となったり、冷や汗、力が入らず、最悪意識を失います。
ウユニの町で倒れた時は病院に運ばれて目を覚ました時の血糖値が50だったので倒れた時は30位だったかもしれません。(低血糖を起こすと体が血糖を上げようとします。この時グルカゴンという血糖値を上げるホルモンが分泌されます。ちなみにアドレナリンも血糖を上げるホルモンなので短距離や重量上げ等の強度の高い運動も好ましくありません)
ナスカからクスコまで4000M超えの峠を上ったり下ったりで血糖コントロールがかなり難しく血糖値が上がったり下がったりして大変でした。
インスリンの貯法は基本的には2~8℃の遮光保存となっていて、絶対凍らせたら駄目で、暑い場所で長時間さらされても効き目が無くなってしまいます。南米の旅ではそんなに暑い場所を走らなかったので気にすることはなかったのですが、前回旅した東南アジアでは暑い時期が多かったので、屋台の袋に入ったジュースを飲んだ後の残った氷を冷蔵庫代わりにしていました。インスリンキット(インスリンカートリッジ、注射針、血糖検査機、ダイアセンサー等)で荷物がかさばります。
しかし、1型糖尿病になって本格的に自転車に乗り始めて、さらに前向きな自分になってきたものだと思っています。なので病気になった事には感謝してる位です。
壮大な景色や文化に触れ、4000M超えの峠を息を切らせながら上り、風が強くてテントを飛ばされそうになったり、ウユニの街中で意識を失い入院する事になったり・・・出会う人々からいただき、・助けてもらい、色々な出来事が繋がっていき旅を終わらさせていただく事ができました。
あっという間の108日間で達成感みたいなものが全くなく物足りない様な気持ちでしたが、ウシュアイアに到着した時、無事に旅を終える事ができて本当に良かったと思えました。
ちゃんと帰ってくるという事は、楽しむ・走り切るという事以前に心に刻んでおかなければいけない事ですね。
古薗祐介
「本当のゆたかさとは何かを感じた。自分を磨き、つらいことを乗り越えて進んでいきたい。病気も吹っ切れた気がする。」と、今後は得度して仏道を歩んでいく決意を固めたそうです。