山下晃和 中南米レポート2

2012年7月19日

※2010年11月より2011年5月まで中南米を走行した山下晃和会員からの地球体験報告です。(2012年7月19日)

オメテペ島にて

「感動のニカラグア」

中米の最貧国は想像以上に美しかった

中米でグァテマラの次に長く滞在した地がニカラグアという国だった。訪れる前は、この国の特徴がイマイチ想像つかなかったが、wellesのロードマップをよく眺めてみると、他の中米諸国が山岳地帯に大きな街があるのに対し、ニカラグアの観光地はほとんど低地にあるということが分かった。荷物を多く積んで、アップダウンが多いと自転車を漕ぐのも大変だが、平地が続くとあれば、道を走るだけでも楽しめるのでは?そんなことを考えながら、アメリカ資本が入って、すっかりアメリカナイズされた国エルサルバドル、一日滞在のみのホンデュラスを経由して、ニカラグアに入国。イミグレーションの女性は非常に無愛想、さらに12USドルの入国税を支払わなくてはならず。最初の印象はとても悪かった。

けれども、僕がここを訪れたころの北半球は真冬だというのに、赤道に近いため気温が高かった。夏が好きな僕にとっては好都合だった。そして、パンアメリカンハイウェイの国道は予想以上に平らで、ところどころダートかと思いきや舗装路も綺麗に敷いてあり、車通りも少なく、道の左右には牛が草を食んでいるというのどかさ。何より、物価が安い!宿の値段は大体200コルドバ(当時740円)以下。1食は、50コルドバ(当時185円)あればお腹一杯になる。ニカラグアと言えば、ニカラグア牛のステーキが有名。また、赤飯に似たガジョ・ピントが美味しい。トルティージャというとうもろこしの皮が主食だったので、ご飯が食べられるのは格別な喜びだった。

赤飯に似たガジョ・ピント(右)
ニカラグア牛

ニカラグア最初に滞在した大きな町はチナンデガ。ここでプロ野球観戦をすることが出来たのだ。インターネットで調べたところ、ちょうど決勝戦をやっていて。偶然にしてはラッキー!チナンデガ・ティグレスとマナグア・ボアーとの初戦。日本では日本シリーズ初戦といった具合だろう。ニカラグアの数少ない娯楽の一つで、異常なまでの盛り上がり。日が長くてナイトゲームのはずが、いつまでたっても明るい。僕は隣のおじさんとすっかり仲良くなって、コーラまでもらった。乾杯!そう、結果は地元の勝利!その夜は、街中が「ティグレス」コール。興奮冷めやらぬ子供達は道路のど真ん中で、夜中まで野球をやっていた。

ニカラグアでプロ野球観戦
ものすごく盛り上がる観客達

二つ目に寄った町はレオン。この名はライオンという意味だ。近くにレオン・ビエホという遺跡があり、ユネスコの世界遺産にも登録されている。ここに中米で1番大きいキリスト大聖堂(カテドラル)がある。そこには、白いライオンの銅像があるので、写真を撮るとご利益があるとかないとか。ここで泊まったエル・アルベルグという安宿がこれまた居心地が良く、1泊110コルドバ(当時410日本円)のドミトリー。この宿で、バスク人のバックパッカー、ミケルと出会った。僕が自転車で現れた日に、英語で「どこから来たの?凄い自転車だね。」と声を掛けてきた。その夜いろいろと話をして、意気投合。ミケルも大の自転車好きで、ノルウェーにロングツーリングに行ったことがあるほど。「ノルウェーは物価が高いから、毎日スーパーで食材を買って、シングルストーブで料理し、テントを積んでキャンプして旅をしたんだ。」と言って、Facebookでアップしている美しいノルウェーの山岳地帯の写真を見せてくれた。出会った次の日に、ミケルとその彼女ラウラ、フランス人ベンジャミンの4人でマングローブを見に行った。事前にミケルがニカラグア人の男性と交渉して、カヌーを手配してくれていたのでスムーズだった。観光ツアーではなかったので、4人で約120円という安さ。そこで、海亀の赤ちゃんを見たり、障ったり、鳥を見たり、様々な動植物を見ることができた。ニカラグアは自然がいっぱいなのだ。レオンを去る日。ミケルとは、「いつかバスクでサイクリングしよう。」と約束して別れた。

中米最大級のキリスト教のカテドラル(レオン)
旅人の集まる宿、エル・アルベルグ(レオン)

居心地の良いニカラグアだったけれど、以前JACCのサイトや記事でも書いたが首都マナグアで強盗に遭ってしまった。15歳から18歳くらいに見える少年たち7,8人に囲まれ、草を切るための錆びたカマのような棒のような物で頭、顔面を殴打され、血だらけになった。お金、PENTAX・W90のコンパクトデジカメ、SUUNTOの腕時計を盗られたが、財布だけは投げ捨てられ、運よくクレジットカードが残っていた。しかし、病院に行ってレントゲンを撮ったら、案の定、鼻の軟骨が折れていた。そんな事件があったら嫌いになるはずのニカラグアだが、決してそうならなかった。宿のオーナーの友人でタクシー運転手ロベルトさんが親切で、警察、病院、両替、スーパーなど色々と連れて行ってくれた。ニカラグア人は優しい人がほとんどで、悪い人はごく一部の連中なのだ。(※ただし、これからもしニカラグアに行く人が居たら、首都マナグアだけはお気をつけください。)

最後に、1番気に入ったのがオメテペ島。スペインコロニアルの残る古都グラナダからフェリーが出ていて、4,5時間ほど。ニカラグア湖という巨大な湖の上に浮かぶ。ひょっこりひょうたん島のように、二つの火山から成る自然豊かなパラダイス・アイランド。欧米人には人気だが、日本人はほとんど居ない。僕が来島したときはゼロ。一周がおよそ120km、自転車で走るにはちょっと大きすぎるが、1つの火山を周るのであればそれほど大変でもない。石像が有名で、教会や、島の至るところに置いてある。土着宗教の後にキリスト教が入ってきた面影が残っているからだろう。とても神秘的である。島の西端にあるプンタ・ヘスス・マリアでは、オレンジ色に落ち込む美しい夕焼けを見ることができ、火山ツアーは、15USドルから25USドルで現地ガイド付き。お隣の国コスタリカでの火山ツアーは、およそ100USドルはする。コスタリカは「自然の宝庫」のようなプロモーションが上手だが、実はニカラグアの方が安くてオススメである。さらに、モヨガルパというフェリー乗り場近くの町のオスペダヘ・セントラルという宿は一泊2.5ドル(当時210日本円)という破格で、とても快適。セーフティボックスもあったが、オメテペ島自体が犯罪の無い島なのだという。時の流れを忘れるほど、ゆったりした島リズム。夜は美しい星空が広がり、ガジョ・ピントに舌鼓を打った後、ハンモックに揺られて過ごした。

オメテペ島に渡るフェリー
プンタ・ヘスス・マリアから見た夕日 でっかく見えた

パンアメリカハイウェイから少しズレる旅となるが、全ルート自転車走破をしたいと思っている人も、ちょっとだけ足を伸ばして、ぜひ寄ってみてほしい。そこには、なぜか懐かしい光景があり、内戦が長く続いた国の急速な経済成長の過程を垣間見られ、中米でも珍しい動植物を間近に感じることができるだろう。

山下晃和


上へ