“一生に一度”のアドベンチャー・サイクリング
“一生に一度”のアドベンチャー・サイクリング
自転車の旅は自己を表現する手段であるにしろ、自立の精神で計画を進め大自然と人との協調性を感知させる、人間にとってこれほどすぐれた道はほかにはないことも教える。苦しいこと、楽しいこと、数々の喜怒哀楽を人と自然が教え、学ばせ、少なくとも生きていくための貴重なエッセンスを充満させてくれる旅に違いない。
日本アドベンチャー・サイクリストクラブでは、こんな旅を“ペダリアン精神の旅”と伝えている。“ペダリアン”とは、ささやかな出会いの積み重ねから自転車の旅人が生みだした言葉だ。一般に、ハードと思われがちな自転車冒険の本質は、実はさりげない日常生活の連続で、世界旅行は日本旅行の延長なのだ。そこに住む人々の“精神”は行ってみなければ分からないし、旅立つ者はみな、自分を見つめるためにペダルを踏む・・・。
まさに「美しい風景は写真でも味わえる。すばらしい文化も“物”に見ることができる。でも異国に住む人々の精神は、訪れてみなければわからない。だから旅に出る!」という、われわれ日本アドベンチャー・サイクリストクラブのペダリアン精神そのものなのである。
ペダリアン精神を養うために夢追人は彼の地を次々と目指す。転職を機会に旅立つ者、大学を休学して旅立つ者、就職を前にして旅立つ者、あるいは夏休みを利用してオーストラリア、カナダ、アメリカ横断に挑む者など、そのチャンスと目的地は様々である。しかし彼らに言えることは、いかなる海外自転車旅行であっても、ごく一部の人を除いて、多くの場合、その人にとって一生に一度、最初にして最後ということだ。それだけに、勇気と決断力をもった自転車地球体験は貴重なものとなる。
これらの“冒険”旅行とは、他人がやらないことを成し遂げることだ、と思っている人が意外に多い。しかしペダリアンにとっての冒険とは、そうではない。貴重な人生の時間をさいて、自転車で憧れの地へ向かい、走り、その空気の重さや軽さ、温もり、色にまで浸ってこそ、意味のある冒険となる。それがペダリアン精神というものだ。勇猛心をあおるわけではないが、旅立つ人は、ぜひ、この精神を忘れずに、はばたいてほしい。
水平線に沈む、真っ赤な夕陽に感動した、あの感慨のように・・・・。